大阪地方裁判所 昭和29年(ワ)4630号 判決
証拠によれば、本件取引の最初の話合のあつたと原告の主張する当時被告は病気入院中で、被告の妻いとが原告の店員河瀬信夫及び訴外橋本公成から本件取引の開始を勧誘せられたが、いとはその意思なかりしに拘らず、右橋本及び河瀬は被告名義を以て取引を開始するに至つたので、いとはしばらくこれを放任しておいたすぎないことを認め得る。
しかるに原告は、被告は年上の妻いとの入婿で被告の経営する上村商店の実権は右いとが掌握し被告の入院中はその代理人として営業の衝に当つていたから、少なくともいとは被告の本件取引につき表見代理人であつたものと主張するけれども、証拠によれば、上村商店は昭和二六年七月頃会社組織として染色業を営み、妻いとは会社と何等の関係のないこと明かであるから、たとえ被告の妻とはいえ、いとに被告の営業上の代理権ありとする原告の主張は容易に納得し難くこれを前提とする表見代理人の主張もこれを承認し難い。